flower-of-days

本のことなど

隣り合っている[映画 ぐるりのこと。]

なんとなく、ゆるい邦画が見たくてこの映画を借りた。タイトルも、リリーフランキー木村多江という主演の二人も気楽そうだな、と。めちゃくちゃ面白いわけじゃないけど、つまらなくもなさそう。


そんな印象の映画を、料理しながら首を伸ばして片手間に見ていた。

下ネタ多いな。

日常の話か。


と思っていたところ、意外とえぐい場面やシリアスな場面も出てくる。社会事象がストーリーに絡んでくるのかと思えば、その気配もない。ただ年月と、夫婦の出来事が流れていく。

この映画は何を言いたいんだろう?

片手間だったせいで細部が頭に入らず、流れがよくわからないし、思ったような癒し系でもないし、半分ほどで疲れてきた。うーん。


ところが、見終わったときには、何か不思議な気持ちが湧き上がってきた。

言葉にしがたい感情を経験できたとき、この映画は(本は、音楽は)面白いと心から思う。見る前から、毒にも薬にもならない話だろうと思い込んでいたけれど、そうでもなかった。とても地味な映画なんだけれど。


※ここからは、ネタバレ的な内容入ります。未見の人は、やっぱり話の流れを知らずに見た方が楽しめると思います。



とても地味な映画なのに、後半の木村多江の回復は、それはもう華やかだった。静かに躍動的な、毎日の積み重ね。ワンステップごとに喜びと安心感があふれる。リリーフランキーはあんまり表情が変わらない。でも、ああ、いいなあと思わせる。よかったね、本当に。


エンディングテーマを聴き、花々の絵を眺めながら、夫婦の話だったのだと思い当たった。

夫婦の話でありながら、多江とフランキーの話のようにも思えた。二人の背景は、説明的には描かれていない。それでも、いくつかの時代と場面と表情を掛け合わせた後に、それぞれ弱さやつまらなさを備えた一人と一人が、なぜだか結びつき、隣にい続けていて、不思議な感慨があった。

必然性などないのに、必然に隣り合っていることの不思議。


カラーがあまりにも違いすぎるけど、夫婦の話としてゴーンガールを思い出した。あちらの方には、恋はあっても必然性はなかった。それがありていに言って、運命の糸みたいなものなのかもしれない。でもそれは、外から付与されるものというよりは、…なんだろう。運命の糸みたいな外的なつながりではないのかなという気がする。病めるときも健やかなるときも寄り添うという強い覚悟でもなくて、何かずっと頼りない、柔らかいものを、それだけは大切にするように努めている、そんな印象をこの映画から受けた。


簡潔に書きたいのに、回りくどい表現になりがち。


リリーフランキーみたいな人いいよね、見た目や振る舞いや性格は全くタイプではないけど、隣り合う人を大切にできる人はいいなあ。